ヒヨドリは1960年代の後半から70年代にかけて都市に進出してきた。東京では、秋に飛来して越冬し、春には山野に戻って繁殖していた。ところが、ビル街でも、人家の庭先でも繁殖するようになり、一年を通していつでも観察できる留鳥へと変化してきた。
ヒヨドリが、都市環境へ進出できた理由の一つに、何でも食べる雑食性の獲得があげられる。本来の食性は昆虫や果実であり、花の蜜を吸っていた。ところが今や、餌台のパンや残飯、ポップコーンや酔っぱらいの嘔吐までつつき、時には吐き捨てられたチューインガムものみこんでしまう。悪食の代表格であるカラス並といってもいいだろう。
ヒヨドリの食性で、奇妙な観察をしたので報告したい。ユズリハの葉を狂ったようにつつき、食べるのだ。筆者がこれを観察したのは2003年1月19日と2月11日。場所は、皇居・東御苑の本丸跡。東京のど真ん中の緑地である。枝先の葉の大半が食い千切られて、丸坊主になってしまった。2004年以降も観察してきたが、ヒヨドリが食べる形跡はなかった。ところが、2010年1月23日、皇居・東御苑の同じユズリハの木の葉が数羽のヒヨドリによってすっかり千切られてしまったのだ。7年ぶりの観察である。(写真1~3)
ヒヨドリはなぜユズリハの葉を狂ったように食べるのだろうか。ユズリハを食べるヒヨドリについて、浜口哲一さん(1997)も平塚市の住宅団地内で観察しているが、大量採食の理由は不明だとしている。ただし、ヒヨドリの糞内から原型の葉が検出されていることから、「ユズリハの何らかの含有成分に反応して、嗜好的にむさぼり食べた可能性」について言及している。また、「ユズリハの葉は比較的葉身が厚く、冬季には耐寒性を高めるために糖度をましていることから、栄養源として採食した可能性も考えられる(唐沢 2005)。年によって大量採食をしたり、しなかったりしている理由も知りたいところである。
参考文献
浜口哲一 1997 ユズリハの葉をむさぼり食べるヒヨドリ BIOS Vol.4:87-88
唐沢孝一2005 ユズリハの葉を大量に食べるヒヨドリ URBAN BIRDS Vol.22:31-32
(写真1~3とも2010年2月11日、皇居・東御苑で撮影)