話のたねのテーブル

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No.28
電子顕微鏡シリーズ 6 星の砂のヒミツ ―有孔虫―
執筆者:浅間 茂
2009年06月17日

有孔虫は名前の通り、孔がある単細胞の生物であり、その孔から糸状の仮足を伸ばし、食べ物を捕らえたり、運動している。多くは1mm以下の大きさで、石灰質の殻を持っている。カンブリア紀に出現し、化石種は約3万種が知られている。現在でも約5千種が生息している。多くは底生生活をしているが、約100種は海洋プランクトンとして浮遊性生活をしている。底生有孔虫は、底質・水深・海水の化学的水質の指標生物として役だっている。沖縄の浜辺に見られる「星の砂」といわれる白い砂は、この有孔虫の殻である。顕微鏡で見ると、数種類の底生生活をする有孔虫が含まれている。最も多くみられるのが、星形の形をしたホシズナ(Baculogypsina sphaerulata)とタイヨウノスナ(Calcarina sp.)である。いずれも死んだ後の殻であるが、生きているものも浅海で観察できる。
浮遊性有孔虫は温度と塩分により分布域が決まるので、化石種を用いて第四紀の海水温度を推定することができる。浮遊性有孔虫は汎世界的に分布し、進化速度の早い系統である。あるグループでは出現初期の段階では右巻きと左巻きが半々であるが、それが右巻きか、左巻きに偏ることが知られている。また現生種のある種は水温により巻き方が異なることが、報告されている。暖流系水域では右巻きが、寒流系水域では左巻きが優占するという。浮遊性有孔虫を化石の産出場所の砂の中から探すのは難しい。しかし、腕足類の化石の内部に含まれている砂の中には、多くの浮遊性有孔虫が見られる。腕足類は古生代には浅海で優占していたが、中生代を通して衰退した。生きている化石といわれるシャミセンガイは腕足類である。二枚貝では体の左右方向に殻がついているが、腕足類は背中側と腹側に二枚の殻がついている。腕足類は大きく分けると無関節綱(シャミセンガイ)と有関節綱(チョウチンガイ)に分かれるが、採取してきた化石は新生代のチョウチンガイの仲間である。

ホシズナ
タイヨウノスナ
巻き貝形
浮遊性有孔虫