話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.29
南の島チョットだけ探検記 第5回 メタリックな連中
執筆者:鈴木信夫
2009年06月17日

 今回は美しく金属光沢に輝く虫たちを紹介するが、その前に、まずはピカピカに光るメカニズムから説明する。たとえばモルフォチョウの翅が青く輝くのは、鱗粉の表面に光の波長サイズの微細な溝があり、その溝に光が当たって反射する際に干渉をおこして輝いて見えるためだ。これを構造色という。しかし、構造色は表面構造だけの問題ではない。タマムシの場合、翅表面から内部に向かって、キチン質の何重もの薄膜があり、さまざまな層で光が反射するときに干渉がおき、層の厚さの違いで緑色や銅紫色に見える。これらは色素ではなく、「物理的構造」だから虫が死んでも、その輝きは構造が維持される限り残る。ところが、生きた細胞や体液等が、構造色の「構造」の部分に関与していると、捕まえたときはピカピカだったのに、標本にすると、やがてがっかりな色となる。
 ややこしい説明はこのくらいにして、メタリックな虫の一番手だが、日本では南西諸島だけに分布する、オオミドリサルハムシである。この虫を最初に見たのは、西表縦断道(横断道については、次回、紹介する)の入り口を探していたときである。結局その日は入り口すら見つけられずに、あきらめてUターンしたがそこでこの虫に出くわした。本州にも緑や青に光るハムシはいるが、オオミドリサルハムシを見つけたときは、その色の美しさ(残念ながら写真では十分伝わらないかもしれない)と大きさに感動した。
 次は、キンカメムシの仲間。本州にいるアカスジキンカメも美しいが、ミヤコキンカメムシ(沖縄本島・八重山諸島特産)は、もっと派手に輝いていた。ナナホシキンカメムシ(本邦では、沖縄諸島と八重山諸島にのみ生息)はミヤコキンカメムシより一回り大きくて、さらに輝いて見えた。鮮やかな光沢をもつ上に、2種とも脚の腿節がいかにも「南の虫」らしい色(単純に「赤」という表現は、ふさわしくない)をしていて、思わず採集したくなったが、標本にするとがっかりするタイプの構造色なので断念した。
 最後に、光り方は前の3種に比べるとややおとなしいが、どうしても紹介したい虫がいる。西表の林道を歩いていたときに、きれいなハンミョウを見つけた。「道教え」の名の通り、こちらが近づくと少し離れたところに、「こっちだよ!」というように止まる。鬼ごっこを何回か繰り返して、ようやく写真が撮れた。東京に帰ってから名前を調べようと大きい甲虫図鑑を見たがさっぱりわからない。困った末にハンミョウの専門家に写真を送って、ようやく台湾産のバテシハンミョウCicindela batesiとわかった。台湾では八星虎甲蟲という名前がついている。八星は前翅の8個の白紋(写真では、両肩部分の小さい紋がよく見えない)、虎甲蟲はハンミョウの英名tiger beetle からきているのだろう。
 西表は台湾に近いので飛ばされて来たか、流木などに乗って、流れ着いた可能性がある。新鮮な個体を何頭か目撃したので、すでに西表で繁殖しているようである。新発見か!と思ったら、わずかではあるがネットでも報告があった。残念!! 世の中おいしい話は、そんなに転がっていない。

 次回は、「西表島横断」(?)をした話である。

オオミドリサルハムシ
ミヤコキンカメムシ
ナナホシキンカメムシ
バテシハンミョウ