森の中で似た色彩の薄茶で斑紋のある羽を拾った。一枚は幅が広く柔らかく、もう一枚は幅が狭く、堅い羽である。共に風切り羽で幅が広く柔らかい方には、羽の先がギザギザして鋸歯状になっている。柔らかい方の羽がフクロウで、堅い方の羽がキジである。キジと同様に他の鳥は、ヨタカ以外は風切り羽にギザギサが見られない。フクロウが飛ぶ時に羽音がしないのはこのギザギザが空気とぶつかるときに、ここから空気が抜けて摩擦を最小限にして音を立てないのである。また柔らかいために羽と羽がぶつかる音もしない。このギザギザを応用したのが、JR西日本で利用されている新幹線500系のパンダグラフである。また小型の風車にも応用されている。またフクロウの初列風切り羽はそれぞれの羽が小さな渦を生み出す形をしているが、翼全体でその渦を打ち消す形をしている。その原理を応用し、初列風切り羽の鋸歯状の縁毛の反対側にあるへこみの形を取り入れたのが、IBMのThink Padの冷却ファンである。このように音を立てずに飛ぶフクロウは、他の鳥には見られない特別な形をした羽を持つ。鳥は飛ぶために、羽毛は小羽枝同士が引っかかるようにフック構造を持っている。エミューなど飛べなくなった鳥ではフックが退化して見られない。フクロウでは鋸歯状の縁毛の先の部分ではフックが見られず空気が抜けられるようになっており、空気と物がぶつかったときにできる振動による音が生じない構造となっている。フクロウが音を立てずに飛ぶのは、獲物に気づかれないこともあるが、ネズミの足音などの音を頼りに獲物を狩るフクロウにとって、羽音は獲物の音を聞くためには大きな障害となるのだろう。フクロウ類は左右の耳の穴の位置がずれており、両方の耳から得られる情報の時間差を利用して、音源の位置を知ることができる。このように時間の差を処理するシリコンチップの一つにフクロウチップがある。