話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.99
見えない世界を見る-紫外線・赤外線の世界3 クモの糸
執筆者:浅間 茂
2010年07月28日

 円網を張るクモの中には、網の中心部に白いギザギザした白い帯が垂直やバツ印、ウズマキ状になっているのを見かける。隠れ帯と呼ばれ、その名前の由来は天敵から体を隠すものと考えられていた。1990年にアメリカの CRAIG と BERNARD はコガネグモ科の一種を用いて、網自体は紫外線をほとんど反射しないが、白帯が紫外線を反射し、餌となる昆虫を誘引し、さらにクモ自身も紫外線を反射しその効率を高めていることを証明した。実験に用いた昆虫はショウジョウバエである。
 紫外線カメラで6月末にコガネグモ科のコガタコガネグモやナガコガネグモを撮影した所、両種とも同様に隠れ帯とクモ自体が紫外線を多く反射した。しかし、細い縦糸も横糸も紫外線写真で確認できた。円網の横糸や縦糸も紫外線を反射するが、細いため隠れ帯のようにはっきりと目立たないのである。

 ゴミグモの網に水滴が一滴丸く付いていたので、紫外線写真を撮ったら、粘球まで見えた。
 「nature 2010年 Vol.463 (586)」に Lei Jiang はタイリクウズグモを用いて網の糸がいかに水を集めるか発表した。糸の繊維が緩く絡み合っている場所に水が集まるのは、繊維の表面エネルギーの勾配による力と、緩く絡み合っている場所が紡錘形をしており、その紡錘形をしていることによる力である。これを応用すると霧から飲料水を集めることが可能であると述べている。クモにとっては、濡れた時に起こる構造変化が網の強度と粘度を回復させるという。
 ところで、このウズグモの仲間は粘球を使うクモではなく、細い糸が幾重にも絡んで昆虫を引っかけるクモである。濡れることで小さなゴミが取り除かれ、引っかかりが増すのかもしれない。よく見られる円網を張るクモは横糸に粘球があり、それで昆虫がかかる。濡れれば粘性が減り、マイナスとなると思われる。クモによって事情は異なる。

ナガコガネグモ
ナガコガネグモ紫外線写真
コガタコガネグモ
コガタコガネグモ紫外線写真
ゴミグモの網に付いた水滴
ゴミグモの網に付いた水滴の紫外線写真
カタハリウズグモの師板糸
オニグモの粘球