先に、アワダチソウグウンバイの日本と千葉県の生息状況を述べ、あわせて伝播速度を考察した(本項2009年No.9参照)。ここではその続報として生態観察記録と既知知見をもとに述べる。
寄生植物は、主にキク科の葉裏だが、特にセイタカアワダチソウを好む。他にオオブタクサ、ブタクサ、キクイモ、センダングサ、コセンダングサ、アメリカセンダングサ、ヨメナ、ヒメムカシヨモギ、オオアレチノギク、ヒメジョオンとハルジオンのロゼット葉、オオオナモミ、栽培ヒマワリ類、栽培キク、シオン、タンジー、ノコンギク、ユウガギク、ヒャクニチソウ、ユリオプスデージーなど、ヒルガオ科のサツマイモ、ナス科のナスなど食性が広い。
繁殖力は旺盛であり、寄生植物さえあれば生息場所を選ばないように思えるが、都市近郊に多く(写真1)意外にも田園地帯や森林地帯では見かけないようだ(写真2)。セイタカアワダチソウでは草刈り後の再生個体にはあまり見られず、ある程度成長した葉に着く。最盛期には同じ葉に卵・幼虫・成虫の複数が同居することが多い。
アワダチソウグンバイは、カメムシ目グンバイムシ科に属する。カメムシ目は不完全変態で蛹の時期はない。幼虫・成虫共に葉の裏から葉肉の養分を吸収する。幼虫は5齢を経て成虫となる。齢とは、孵化幼虫を1齢、それが、脱皮すると2齢、即ち4回脱皮して5齢、もう一度脱皮して成虫となる。
ハルジオン・ヒメムカシヨモギなどのキク科植物のロゼット葉裏で成虫越冬。セイタカアワダチソウが成長するとその葉裏に移動し葉脈沿いの組織中に半分埋め込むように産卵する(写真4)。
成虫は触っても簡単に逃げないので、在来のグンバイムシ類に比べ行動が鈍いように思われているがそうではない。薬剤を散布すると素早く飛翔して逃げる。特に飼育したわけでないが、1世代は5~9月の間は1箇月前後であろう。
私は天敵に捕食されている現場には遭っていないが、カスミカメムシ類に捕食された記録もある。
分散は風によるが、荷物や草花に着き人により運ばれることも多いであろう。
【注1】不完全変態の幼虫を若虫とも呼ぶが、ここでは全て幼虫とした。
【注2】詳しくは「千葉生物誌59(1):5-16,2009(ISSN 0385-0986)」を参照されたい。