話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.89
山菜取りで食中毒に気をつけましょう(その2)
執筆者:廣田伸七
2010年05月19日

 今年は春から異常気象である、例年なら彼岸を過ぎると日毎に暖かくなり、4月になると気温も上がってくる、ところが今年は雨の日が多く、おまけに寒気がしばしば南下して、4月17日には東京でも雪が積り45年振りの記録とか、日照時間は少なく寒い日が続いているが、4月末ともなるとさすがに暖かくなった。東北や北海道でも山野の草木が芽ばえ山菜とりが始っている。
 毎年今頃になると山菜取りで植物を間違えて食中毒を起す例は後をたたない。植物のそっくりさんは数多くある。特に幼植物の時期はどれも同じように見えて区別が難しい。例えばギボウシとコバイケイソウ、ニリンソウとトリカブト、セリとドクゼリなど幼植物が似ているものを間違えて摘んで食べて食中毒を起したというニュースは毎年報道されている。これらはいずれも成植物になると明らかに違った形をしているので間違うことはないが、幼植物の場合はかなり見分けるのに迷う仲間である。
 下の写真のギボウシとコバイケイソウの成植物では明らかに形が異なるが、幼植物ではそっくりさんで見分けが難しい。幼植物の写真を見比べて見ると葉の形が似ていて、両者とも巻込んでいてそっくりである。ただ、両者の植物をよく知っているとギボウシは山地の林の中や斜面の土の乾いた場所に生育するのに対し、コバイケイソウは湿地や小川の岸など水辺に生育するという知識を持っていれば、生育場所によって判断でき、また、ギボウシは小型だが、コバイケイソウは大型ということでも区別できる。

 ニリンソウとトリカブトは葉の形が似ているので間違いやすいが、ニリンソウの多くは群生するのに対しトリカブトは2~3本で生育しているという知識があれば見分けることができる。トリカブトは毒性が強く誤食すると嘔吐、下痢、しびれ、呼吸麻痺などの中毒を起こし、特に毒性の強い根を誤食すると死にいたる。ニリンソウも弱い毒成分があるが、地方によっては春の山菜として食べる植物だが、多食しないように注意したい。

●ギボウシについての詳しい情報は、全農教「ミニ雑草図鑑」参照
●トリカブトについての詳しい情報は、全農教「牧草・毒草・雑草図鑑」参照
●ニリンソウ、トリカブトについての詳しい情報は、全農教「日本原色雑草図鑑」参照

ギボウシ成植物
コバイケイソウ成植物
ギボウシ幼植物
コバイケイソウ幼植物
ヤマトリカブト幼植物
ニリンソウ幼植物