話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.59
ウグイスカグラ
執筆者:鈴木邦彦
2009年10月14日

(おいしいハスカップ、有毒で食べられないヒョウタンボクの親戚筋)
(鴬隠家、Lonicera gracilipes MIQ. var.glabra MIQ.)

 ウグイスカグラはスイカズラ科のかん木で、日本の固有種であるという。ウグイスノキとも呼ばれるが、東北地方ではグミとも呼ぶ。重要な果物とは位置づけられていないので、英名は無いようである。北海道から九州まで、森林周辺などの山野に分布している。筆者が住む茨城南部の茂みの中でもよく見かけられる。春になると花梗の先に小さなラッパ状の花が2個ずつ垂れ下がる。そこに長さ1cm程度の楕円形で透き通った、淡い紅色の果実が一つあるいは二つずつ着く。甘酸っぱくて美味しい果実である。
果実は小さくて生産性も余り良くないので経済栽培はされていないが、時たま庭木として植えられているのを見ることがある。果実が大きな種類やたくさんの果実が着くような種類が育成されれば、ジャムやゼリーなどに利用できるのではないかと思う。
 ウグイスカグラという名前はウグイスの隠れ家という意味だという。ウグイスが鳴く頃に食べられる美味しい果実ということであろうか。

 ウグイスカグラと同じスイカズラ科の植物にクロミノウグイスカグラ(L. caerulea LINN. ssp.edulis(TURCZ.)var. emphyllocalyx (MAXIM.) NAKAI.)という果物がある。

 ウグイスカグラとよく似た形の果実を着けるが、色は黒に近い濃い紫色で、名前の頭に「クロミ」と付けられる理由も納得できる。多分、機能性成分のアントシアニンを大量に含んでいるのではないかと思われる。和名はクロミノウグイスカグラだが、アイヌ語のハスカップという名前でも呼ばれる。むしろこちらの名前を知っている人の方が多いのではないだろうか。ハスカップといえば北海道の土産として有名で、ジャムやホワイトチョコレートで果実をコーティングしたものに人気があるようである。

 これらと良く似たヒョウタンボクの果実は有毒である。間違えないように注意して頂きたい。ウグイスカグラとよく似た植物にヒョウタンボクというのがある。学名はL. morrowi A.GRAYである。樹の姿や果実がよく似ている。特に、果実は熟すと直径5mm程度の美しい紅色でまん丸の果実がウグイスカグラと同じように2個ずつくっついている。似ているので間違いやすい。観賞用で鉢植えにされる場合があるが、問題なのは、ヒョウタンボクの果実は有毒だということである。北海道から中部地方の山野には種々のヒョウタンボクが生える。何れもきれいな丸い果実が2個ずつ着いているので注意して欲しい。

 皆さんはタジキスタンという国をご存じだろうか。中国の新彊ウイグル地区の向こう側にある中央アジアと呼ばれる地域で、北側にはキルギスタン、南側にはアフガニスタン、そのむこうの西側にはウズベキスタンがある。国土の北側にはパミール高原と呼ばれる6,000~7,000m級の険しい山々が連なっていって、1,500~2,000mのタジキスタンの高所の原野には牛や山羊が放牧されているが、その間にセイヨウメギの仲間とヒョウタンボクの一種が生えている。家畜に食べられずに大きな株になっているので不思議に思ったのだが、セイヨウメギの方は刺があって食べにくいためと思われる。美しい果実がたくさん着いているヒョウタンボクの方は日本にあるものと同一種ではないが、枝葉が有毒かどうかは分からないが、果実には毒があって家畜が食べないためであろうと思われる。

(註)ハスカップについては全農教発行の「校庭のくだもの」32頁に記載しておりますので参照して下さい。

ウグイスカグラの花
見た目にも美しいウグイスカズラの果実
ウグイスカズラの株の姿
ハスカップの花
ハスカップの果実
ウグイスカグラに似るが有毒のヒョウタンボクの果実
タジキスタンの原野で家畜にも食べられずに残るヒョウタンボク