自然観察大学の野外観察の下見で千葉県我孫子市岡発戸を訪れたのは2009年5月10日でした。人家の土台を守る為のコンクリート製の壁のすきまに水抜きの塩ビ管が水田に面した道路に出ており、そこにアオダイショウが潜んでいました。とぐろをまいて頭をこちらに向けています(写真1)。まるでカプセルホテルにいるようでした。同様に塩ビ管にいたのを南房総市の大房岬でも観察しています。
さて、かつて千葉県富津市志駒の環南小学校で校舎の外壁を垂直に登っていくのを見ましたが、スズメの巣をねらっているのだと教えられました。このヘビは家の内にもいることがあります。尚学図書編(1989)『日本方言大辞典』(小学館)にイエヘビ(家蛇)の呼名が熊本県天草郡に分布し、同意で拙著『千葉県の動物方言第二報』(1970・自刊)にヤヌシ(家主)が八街町にヌシが木更津市などにあります。昔、私が子供の頃安房郡鋸南町に住んでいた時、母屋は萱ぶきで天井もなく、梁の柱がむき出しでした。どさっと音がしたので行ってみると畳の上にこのアオダイショウが落ちていました。きっと家の鼠をとっていたのでしょう。この蛇を大事にしろと言われていたような気がして、動き出すまでじっと見ていました。さきの『日本方言大辞典』にネズミトリ(鼠捕)の呼名が全国各地にあり、古くは越谷吾山(1775)の『物類称呼』に摂津で、仁井田好古(1839)の『紀伊続風土記』に紀伊で、小野蘭山(1847)の『重訂本草綱目啓蒙』に讃岐での記録があります。今泉吉典監修(1975)『学研中高生図鑑 動物』に「平地や山地の耕地や草原にすむが、むしろ人家や倉庫付近に多い。主食はネズミ類で、人家にすみつくのもその為である。日本産のヘビでは最大」とあります。
また、千葉県内でオデージャ(大蛇)とも呼ばれるのは大きいことに由来します。
ちょっと怖い感じがしますが、このヘビのしっぽを捕まえ持ち上げるとおとなしく、首をもたげますが、手まで頭は上がってきません(写真3)。お試しあれ!!、でもマムシやヤマカガシなどは絶対にやってはいけません。危険です。
蛇と人とのかかわりはとても深いです。鈴木棠三(1982)『日本俗信辞典 動・植物編』(角川書店)には数多くの蛇の俗信が記載されています。その中で「青大将はお諏訪様のお使の動物だから、捕る人はいない。養蚕に当たって(筆者注:たくさん繭がとれた)お諏訪様からネズミ除けに青大将を借りてくる。それは実物ではなく、神主にお札をもらって・・・(群馬県利根郡)」とあります。このお札をもらってくるのは、鼠が蚕や繭を食べてしまい、この蛇が鼠を食べてくれるからで養蚕家にとって鼠を退治するありがたい動物なのです。