話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.16
「アトリ」の当たり年
執筆者:唐沢孝一
2009年05月06日

 ここ数年、近所の公園や雑木林などで冬鳥を観察しているが、年によって渡来する種類や個体数が大きく変化することに気づいた。
 例えば、「2006-07年冬」はウソが多数渡来して話題になった(写真1)。千葉県では春先に桜の花芽が大量に食べられ、春の花見にも影響が出たところもあった。ところが、翌シーズンの「2007-08年冬」はウソが嘘のように激減。代わりにキクイタダキが大当たり(写真2)。 都心の公園でも、千葉県内の公園でも、3~7羽の小群によく出くわした。今シーズン、「2008-09年冬」は、ウソもキクイタダキも姿を潜め、「アトリ」の当たり年となった(写真3)。

 もうだいぶ前のことになるが、数万羽、数十万羽の大群が白銀光る日本アルプスをバックに乱舞する写真をみて感動したことがある。大空を埋めつくし、冬の水田地帯で採餌したりする光景は迫力満点だ。今シーズン、筆者は明治神宮で数羽を、市川市内の農耕地で50~100羽を観察した程度だが、渡辺仁さんからの鳥便りでは、鹿児島県内で1万羽以上の大群を観察したという。また、今冬はアトリの他に、シメ、ジョウビタキも多数見かける。辻智隆さんは、関東では比較的少ないミヤマホオジロを茨城県内で撮影している(写真4)。

 冬鳥の渡来には、なぜ当たり外れがあるのだろうか。その原因が解明されれば、来シーズンの当たり鳥の予想も出来るかもしれない。「2009-10年冬」は、ウソやキクイタダキが復活するのか。突如としてマヒワやミヤマホオジロ、レンジャクなどの大群が飛来するのか。それともウソとアトリの組み合わせとなるか。「冬鳥予想」もまた楽しからずや、である。

参照資料
・ウソ, キクイタダキ, アトリ→『校庭の野鳥』 p.114, p.107, p.113)

1.2006-07年冬に多かったウソ (千葉市・昭和の森)
2.2007-08年冬に多かったキクイタダキ (市川市・大町公園)
3.今冬に多かったアトリ (市川市郊外)
4.ミヤマホオジロ (辻智隆氏撮影)