電子顕微鏡で昆虫の複眼を見ると、六角形がびっしりと並んでいる。
自然界で六角形の形で思い浮かべるのは、ハチの巣、カメの甲羅模様、雪の結晶などである。ハチの巣をHoneycombといい、このように正六角形、正六角柱を隙間なく並べた構造をハニカム構造という。ミツバチの巣は、幼虫を育てる場所である。限られた空間を隙間を少なくして育てるには、六角形が最も効率よいのである。幼虫は弾丸型をしているので、三角形や四角形では窮屈になるし、丸や八角形では巣に隙間ができる。この六角形の筒は、最も材料が少なく広い空間を確保でき、蜜を貯めたりするのに、軽くて丈夫な構造となる。このように最小限の材料で、最大限の空間をつくる構造が、ハニカム構造である。
カメの甲羅模様も基本的にはハニカム構造である。甲羅とは脊骨(椎骨)と肋骨がくっついて一枚の板状になったもの(骨板)と、鱗が変化した板(甲板)が重なってできている。背中の甲羅(背甲)の真上の3枚の甲板(椎甲板)は、きれいな六角形をしている。骨板と甲板のつなぎ目はそれぞれずれていて、重なることはない。さらに甲羅はドーム型をしており、外部からの圧力に対して、強い強度と力の分散を保っている。成長と共に甲羅が大きくなるので、イシガメやクサガメは木の年輪と同様に、甲板の年輪から年齢を知ることができる。動物界で最も頑丈な甲羅という防御システムを得たカメは、代わりに運動性を失った。スッポンやオサガメのように完全に水生や海生のカメは、泳ぐことに適応するため甲板が退化してなくなっておリ、ドーム型をしていない。
多くの昆虫の複眼は六角形をしているが、昆虫によっては五角形など微妙にいろいろな形や、丸っぽい中間的な形が混じっていたりする。アブラムシのように丸い個眼の場合もある。エビの中には、イセエビやアメリカザリガニのように四角形のものもいる。一万個の個眼で構成されている複眼は、デジタルカメラのセンサーであるCCDの一万画素に相当すると考えられている。ショウジョウバエは760個、オニヤンマは約3万個といわれており、それぞれは760画素、3万画素となる。個眼の数を、一定の眼の丸い形の中で最大限にするには、六角形が最も適していることになる。