クモは網を張るクモと網を張らないクモがいる。網を張るクモの代表的なものは円網であろう。円網を張るクモはよく網を張りかえているのを見かける。コガネグモ科の円網の横糸には虫が引っかかる粘球がある。時間と共に、粘りが弱くなるために張りかえるのである。その粘球を使わずに虫を引っかけるのが、篩板類のクモである。糸に細かい糸をからみつかせて、それで虫を捕獲する。クモの糸を出す部分は、前疣・中疣・後疣と通常3対あるが、前疣の前に篩板という板状の横長の出糸器官を持っている。また篩板類は第4脚の2節目に毛櫛という先端が曲がった毛の束があり、これで数百個の篩板の出糸突起から、糸を紡ぎ出している。以前はこの篩板の有無のみで、クモは篩板類と無篩板類と大きく分類され、篩板類にはウズグモ科、ガケジグモ科、ハグモ科、チリグモ科などのクモが含まれていた。しかしいくつかの篩板類の系統では、篩板が消失して無篩板類となっているなど、系統体系が徐々に明らかになるにつれ、現在では篩板類という分類はされなくなった。
身近に見られる篩板を持つクモにはウズグモ科のカタハリウズグモ、マネキグモ、オウギグモ、ハグモ科のネコハグモなどがいる。カタハリウズグモは最も普通に見られるウズグモで、網の中心部に渦巻き状の隠れ帯を持つクモである。マネキグモは条網を、オウギグモは名前の由来通り扇形の網を張る。ネコハグモは電灯近くの建物や、葉の丸まった部分に不規則な網を張る。電灯周辺の不規則な汚れた網があれば、ネコハグモの網であろう。ネコハグモの網の汚れは、粘球を利用していないので長期に渡って網を張り替えず利用しているためであろうか。いずれも軸糸に篩板から引き出した真綿のような細い糸がついており、それが虫の体毛にからみつく。虫眼鏡で見てもはっきりしないが、もし顕微鏡があるならどの部分にその糸がついているか、容易に知ることができる。