陸上の植物には茎や葉に毛が生えている物が多い。それぞれの毛は植物体にとって何かに役立っているのであろう。毛の役割として防水効果、防寒効果、昆虫による食害を防ぐ防傷効果、防紫外線効果などがある。しかしまばらに生えて奇妙な形をしている毛は、果たして何に役立っているのだろうか。まだ毛の役割については分かっていないことが多い。
ウツギの葉の表は星形の様な形をした星状毛が生えているが、葉裏の毛は小さな粒状のものが点在し、まさにヒトデのような形をしている。これらの毛は葉を食べる小さな虫にとっては葉の上を歩き回ることの障害となっていると考えられている。
グミの仲間は葉裏に太陽の形をした毛を持っている。グミの種類によりこの毛の形は、少しずつ異なっている。毛は多細胞で、細胞が放射状に並んだもので、そのその下には気孔が見える。このように葉裏にびっしりと生えているのは、気孔からの水の蒸散を抑えるのに役立っていると思われる。直射日光を避けて葉の温度の上昇を抑え、さらに被うことで気孔周辺の空気の流れが弱くなり、外部との蒸気圧の差を少なくして蒸散を抑えているのだろう。
アオジソの葉裏にはシソの香りを分泌する腺毛細胞が見られる。ここでつくられた香り物質は直接外に分泌するのではなく、葉の表面を被っているクチクラ層の下で貯えられる。この腺毛は筋状の溝が数本見られることから、いくつかの細胞が合わさってできていることが分かる。
イヌムラサキシキブはムラサキシキブとヤブムラサキがかけ合わさってできたと考えられている。肉眼ではムラサキシキブは葉裏に毛がなく、ヤブムラサキは毛が多い。イヌムラサキシキブはその中間である。電顕で見ると、ムラサキシキブとイヌムラサキシキブには腺毛が見られるが、ヤブムラサキにはない。ヤブムラサキとイヌムラサキシキブには星状毛があるが、ムラサキシキブにはない。