話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.74
見えない世界を見る-紫外線・赤外線の世界1 新年事はじめ
執筆者:浅間 茂
2010年01月27日

 私たちの眼は400nmから700nmまでの波長を見ることができる。しかしより波長の短い紫外線や赤外線を見ることはできない。しかし、クモや昆虫、鳥などは私たちの見ることのできない紫外線を認識できることが分かっている。鳥やクモなどは、紫外線で見ると雌雄によって異なっていることや、紫外線を利用して餌を捕ることなどに役立っている等が、報告されつつある。モンシロチョウの雄の羽は紫外線を吸収し黒く、雌は反射するので白いことなどはよく知られている。人間の肉眼では見えない世界を見たいために、半年以上かけて、ようやく、紫外線そして赤外線を撮影するデジタルカメラを、改造してつくりあげた。正月、まず手始めに、花、クモ、カモなどを撮影したが、可視光線で見る世界と違う世界が待っていた。
 元旦の日に手賀沼遊歩道(千葉県我孫子市)を歩いていたら、ジョロウグモが網の中央にいた。普通は11月頃に産卵して死んでしまうものだが、食べ物不足のためか産卵できずに、生きながらえていたのだろう。この紫外線撮影をしたジョロウグモは可視光線とは異なっている。背中に白い筋が走っている。今までウロコアシナガグモで、紫外線撮影をすると背中に白い筋があるという報告があったが、一番身近かなジョロウグモでは聞いたことがない。よし今年は東京でクモ学会があるので、この自作秘伝の秘密兵器を使ってクモおよび網を撮りまくり発表するぞと、心意気があがる。
 黄色い菜の花にカメラを向け写真を撮ると、花の中心部が黒い。チョウやハチなどのため、ここに甘い蜜があるぞという目印である。ツバキの花は雄しべが真っ黒である。ヒヨドリやメジロに蜜のありかを示しているのだろう。ツツジは上の花弁の所だけ黒くなっている。よく見るとそこに小さな孔が開いている。チョウはここから口吻を差し入れて蜜を吸う。
 一般に白い花は黒く写るが、白い鳥は白く写る。白い花は紫外線を吸収するために黒くなる。しかし白い鳥は何故紫外線を反射して白くなるのだろう。中まで取り込んだら、紫外線によるダメージが大きいので、紫外線を反射する特別な構造を持っているのだろうか。

写真1.ジョロウグモの雌
写真2. ナバナ(菜の花)
写真3. ツバキの花
写真4. ツツジの花