話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.4
春の七草
執筆者:岩瀬 徹
2009年02月18日
デパートで売られていた七草

正月に初めて「春の七草」の寄せ植えの鉢を買ってみた。径15cmほどの浅い鉢に7種が植えられている。それに七草の説明が付いている。
目立つのはスズシロ(ダイコン)で葉を付けた根の大半が現れている。スズナ(カブ)は半分ほどが見える。そのまわりに小さなセリが1本、ハコベが2本ある。オギョウ(ハハコグサ)、ホトケノザ(コオニタビラコ)、ナズナのロゼットが植え込んであるので7種類になる。江戸川区の某農園製とあるから、それ用に栽培したものであろうか。
ナズナとラベルしてあるロゼットの根生葉は長い柄のあるへら形で、とてもナズナとは見えないが、後から出ている小さな葉は羽状に切れ込んで、たしかにナズナである。栽培するとこんな形になることもあるのかと思った。コオニタビラコの葉も微妙であるが、花の咲くまで待つとするか。

大分以前の話になるが、知り合いの者が同じように七草の鉢を買って、そのまま育てていたら、ホトケノザ(タビラコ)としてあったものがタンポポになった、だまされたと怒っていた。タンポポというのはどうかと思ったが、あるいはオニタビラコかヤブタビラコであったかもしれない。ロゼットの区別はむずかしいが、七草は5種までがロゼットをもつタイプである。
七草に凝って、スーパーに並んでいるパックの七草を買ってみた。こちらはJA大分の扱いとある。この中身は小さなダイコンとカブ、それに細い細いセリが1本、ハハコグサとナズナ、コオニタビラコ(とおぼしき)のロゼットが1本ずつ入っていたが、パックの大半はよく伸びたハコベで占められていた。このハコベも栽培なのだろうか。
これも少し前の話、七草を出荷した農家がハコベが違うといって返品されたという。どうもそれはコハコベであったらしい。七草といえば日本古来のミドリハコベでなくてはならないのであろう。コハコベもミドリハコベもいっしょにしてハコベと呼んでいるから甘く見たのかもしれない。
ちなみに、買った鉢のハコベとパックのハコベは、いずれも間違いなくミドリハコベであった。


春の七草とは正月七日の七草粥に入れる若菜のことであるが、万葉の頃は漢字でこう書いた。
 芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷(はこべら)、仏座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)。
 これを現代風にすると、セリ(セリ科)、ナズナ(アブラナ科)、ハハコグサ(オギョウ、キク科)、ハコベ(ハコベラ、ナデシコ科)、タビラコ(ホトケノザ、キク科)、カブ(スズナ、アブラナ科)、ダイコン(スズシロ、アブラナ科)となる。
このうち、カブとダイコンは野菜、その他は雑草で、早春は下の写真のような形をしている。(廣田 注)

七草の参照資料:「ミニ雑草図鑑」
・セリP.13
・ナズナP.72
・ハハコグサP.102
・ハコベP.65
・タビラコ(コオニタビラコ)P.157

セリ
ナズナ
ハハコグサ
ハコベ
タビラコ