都内から下りのJR総武線に乗って江戸川を渡るころ、千葉県側の台地のへりに長く続く林が見えます。都内とは大きく異なる景観です。最近はマンションや大学などのビルが増えてこの景観も大分変わってきました。
江戸川沿いの堤防の道を歩くとこの林を間近に見ることができます。タブノキやシロダモなどの常緑広葉樹を主にし、エノキ、ケヤキなどの落葉広葉樹を交える林です。斜面が急なので林床は崩れやすいようです。北に進むと里見公園がありますが、このあたりの斜面は古いスダジイの林になっています。もう過熟林といってもいいかもしれません。
市川市の街なかにあってこれだけ長い斜面林が残るのは貴重な存在で、当然保全のことが考えられていますが、いろいろと難しい課題もあるようです。
ところで、今から約40年前この斜面林の一角が30mほどにわたって伐採されました。何のためかわからなかったし、市民も緑の改変に対して今ほど敏感ではなかったようです。気づいたときはササ原になっていました。
伐採はそこだけに止まり斜面はそのまま放置されました。時折り歩く機会がありましたので見ていましたが、アズマネザサが茂っているなか低木が現れているのがわかりました。
今年になってもう一度眺めてみました。中へは入れないので外観だけですが、樹木はアカメガシワが優占し高さは7~8mに達しています。幹の直径は10~40cmでまちまちです。これにエノキやミズキなどが交じっているようです。二次林形成の初期の状態を示しています。それより低い層にはタブノキやシロダモ、ヤブツバキなどが生えています。
これから見てさらに数十年後には、隣接している常緑広葉樹林のような形に移行するのではないかと想像されます。伐採したことの是非はともかく、結果としては林の若返りを図ったことになります。ただササの過密な部分は樹木の生育が少ないようで、ササの管理をすれば林の復元はもっと早いのではと考えます。毎日たくさんの人が散歩する道です。こんな自然の動きを知ってもらうような解説板でもあるといいなとも思います。
斜面が改変造成されてしまえば元も子もないのですが、地形が保存されれば伐採されてもやがて植生は復元されます。それが日本の自然環境のありがたいところです。