話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.55
地球温暖化の影響か?
執筆者:廣田伸七
2009年09月16日

東京都西部多摩丘陵の住宅地にマルバツユクサが出現

 東京都の西部、高尾山の近くの多摩丘陵地、八王子の住宅地に〈ツユクサ科〉のマルバツユクサが畳1畳ぐらいの広さに広がって生育しているのを発見した。
 地球温暖化の影響で、本来は西南暖地にしか生育できなかった植物がしだいに北上して関東以北でも見られるようになることが多くなっているが、マルバツユクサもそうした植物の一つのようである。

 マルバツユクサは昔はあまり目立たず、マイナーな植物であった。ちなみに日本の代表的な植物図鑑「牧野・新日本植物図鑑」の13版、昭和41年発行のものではマルバツユクサは記載されていない。平成12年3月発行の「新訂・牧野新日本植物図鑑」では記載されている。現在でも写真による一般向けの野草図鑑などではマルバツユクサはあまり見あたらない。もちろん、本格的な植物図鑑では必ず記載されている。例えば「新訂・牧野新日本植物図鑑」(北隆館)、「日本の野生植物」(平凡社)、「原色・日本植物図鑑」(保育社)、「新日本植物誌」(至文堂)、「寺崎・日本植物図譜」(平凡社)などには記載されている。これらの図鑑の分布、生育場所を調べてみると、上記のすべての図鑑で“関東南部以西から沖縄までに分布し、海岸の砂地、または海岸近くの砂質地に生育する”と全く同じことが記してあり、内陸部の畑や果樹園などに生育するとは書いてない。事実、昭和50年代には、関東地方でも房総半島南端の館山や白浜の海岸の砂地や、海に近い畑地まで探しに行かないと見られない植物で、東京の多摩では見られなかったものである。
 昔はマイナーな植物であったが、最近では海岸や海岸近くだけでなく、かなり内陸部まで入り込んでいるようである。九州では内陸部の畑や果樹園などに侵入して畑作物の強害草として問題になっている。
 八王子で生育しているものは住宅地の道端に群生し、大型で高さ50cm前後あり、葉もかなり大型である。どうしてこんな場所に入り込んだのか見当もつかない。マルバツユクサは茎の先に咲く花も種子を結ぶが、地中にも多数の閉鎖花をつけ種子をつくるので、もしこれが畑にでも侵入すると大変なことになる。これも、地球温暖化の影響か?

住宅地に発生したマルバツユクサ(↑印)
群生したマルバツユクサ、高さ約50cm
マルバツユクサの花
地下の閉鎖花