話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.2
厳寒に氷の花を咲かせる植物・シモバシラ
執筆者:廣田伸七
2009年02月11日

〈霜柱〉? 地表にできる霜柱のことではない。
厳寒の寒中、茎に見事な氷の花を咲かせる植物のシモバシラのことである。この氷の花は偶然にできるのではなく、種も仕掛けもあってできる霜柱である。植物のなかには変わった現象を演出するものがある。
シソ科の多年生の植物シモバシラ(Keiskea japonica Miq.)もその一種で、秋に花を咲かせた後、葉や茎は枯れるのが厳寒の頃、枯れた茎の根本に霜柱のような氷柱をつくる特性がある。このためにシモバシラ(霜柱)という名がつけられた。吸水力の強いこの草は葉や茎が枯れても毛細管現象で水を吸いあげ、それが茎から滲み出して凍り、次第に大きな氷柱をつくっていく訳である。こうした現象は同じシソ科のアキチョウジでも見られる。ともあれ、秋に花を咲かせ、そしてまた他の植物は深い冬眠に入っている厳寒期にもう一度氷の花を咲かせる風流な植物である。

シモバシラ。雑木林など木陰にはえ、9月~10月に穂状の花序を出し、白色の花を咲かせる。開花期(左)と開花前(右)
枯れた茎に板根のような氷柱をつくる。
枯れ茎にかたまってできた氷柱。
アキチョウジ。アキチョウジにも氷柱ができる。