1.正月のお飾り
ウラジロのことを昔はシダと呼ぶ地方があった。
ウラジロの葉が枝垂れるように付くことから「しだる」と呼ばれ、それが「シダ」と呼ぶようになったという説がある。
シダ(ウラジロ)はお正月のお飾りに古くから用いられている。年齢がシダ類の枝のように長く伸びることを願って、さらに葉の裏の白さをあわせて長寿の意味をもち、また常緑で枯れないことから正月に飾る様になったといわれている。
ウラジロには、「モロムキ」という名もある。モロムキは共に向かい合うという意味で、羽片が葉柄の先から左右に広がる一対の様を表している。羽片が向かい合い円満な夫婦をたとえており、おめでたいので正月のお飾りに用いられたという説もある。
また別の説もある。ウラジロの2本の長大な羽片が向かい合う様は、まさに両足を広げたようである。真ん中に黒褐色の鱗片におおわれた新芽は男性自身に見立て、早春から天に向かって突っ立った姿。それにあやかって「精力絶倫-子孫繁栄」を祈った。
おそらくこのような考えが合わさって、正月のおめでたいお飾りとして用いられてきたのであろう。
ウラジロはウラジロ科に属している。熱帯から亜熱帯に分布の中心のあるグループで、日本でも暖地に多く見られる。国内には、同科には、ウラジロの他にコシダ、カネコシダが分布している。カネコシダは九州地方の限られた地域に稀に分布している。ウラジロとコシダは西日本に多く分布が見られ、特にウラジロは、明るい林床や林縁部では生育が良く、2m以上にもなり林の雑草として除去に困っている地域もある。
2. 葉の展開
ウラジロの葉の展開は他のシダと異なる成長の仕方をする。すなわち、1年目は地下茎から伸びた葉柄の先から左右に1対の羽片を広げる。翌年の春に左右の羽片の基部にある芽が成長し、先端で再び左右に1対の羽片を広げる。このようにして、その翌年も同じように羽片をつける。1年に1対の羽片を出し、成長し続ける。羽片の寿命は2~3年で、下の方の羽片から枯れる。南国では1.5~2mに成長する。下総地方では30~40年前は分布の北限近くであったので、30~40cmの小さい個体が多く見られた。しかし最近では1~1.5mに成長したものが見つかるようになった。これは温暖化の影響によるものかもしれない。今後の分布と成長を見守りたい。
ウラジロについては全農教の「シダ植物」に詳しい解説があります。