■ SADI
SADIは“Seminar on Acari-Diseases Interface”の頭文字をとったもので「ダニと疾患のインターフェイスに関するセミナー」のこと。1992年、国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)の希少感染症研修会での「日本紅斑熱に関する講演・討論」を出発点として1993年に発会した。ダニ媒介性疾患の基礎から臨床まで、ベクターサイドと臨床の幅広い研究者が知見を共有することを目的に、各分野の専門家が集まって毎年開催されている。
■ 12年の研究成果を結集
SADI刊「ダニと疾患のインターフェイス」から12年が経過したが、その間のSADIの進歩には目覚しいものがある。研究対象、研究領域が広がり、その内容も深みを増している。これら、12年間の研究成果を結集し、高い学術レベルで先進性のあるものとしてまとめあげたのが、本書「ダニと新興再興感染症」である。
1. ダニと新興再興感染症の史的概観
・日本紅斑熱-新興感染症の黎明
・つつが虫病-再興感染症の波紋
・ライム病-野口英世に学ぶ
・疥癬(Scabies)の歴史
・伝染病予防法から感染症法へ
・わが国の医ダニ学-ベクターの勃興
2. ダニの基礎医学
1 医ダニ類の分類と性状
・日本産ツツガムシの種類と検索表・日本産マダニの種類と幼若期の検索
・ダニ類の分子生物学的手法による分類
・マダニの微細構造と病原体検出
・マダニ成分の分子生理学
2 医ダニ類による直接的傷害性
・ダニ類による刺症
・疥癬の臨床と実験
・ダニとアレルギー疾患
・ダニによる皮膚炎-マウスをモデルとして
3. ダニ媒介性新興再興感染症
1 多彩な細菌感染症
1) 拡大する日本紅斑熱
・日本紅斑熱-臨床の最前線
・日本紅斑熱の病理
・マダニ類から検出されるリケッチアの多様性3.
2) 衰えないツツガムシ病
・つつが虫病原体の知見-より良い検査へ向けて
・ツツガムシ病重症化にみる臨床の新たな視点
・つつが虫病-多種多彩な疫学
3) 潜在するエーリキア症関連群
4) 多彩なライム病
・ライム病-臨床対応の実態
・ライム病-臨床の最前線
・ライム病ボレリアの多様性
・ライム病媒介マダニの地理病理学
5) 回帰熱の現状
6) Q熱の現状と課題
7) ダニ類を含む動物由来感染症としての野兎病
2 警戒すべきウイルス感染症
・ダニ媒介性脳炎の現状と今後
・マダニが関わる出血熱とウエストナイル熱
3 新たな原虫感染症
・ヒトバベシア症の新展開
・日本のマダニ媒介性トリパノソーマ
4. 関連トピックス
・バイオテロリズムとダニ媒介性感染症
・獣医学から見たダニ媒介性疾患
・吸血昆虫と新興感染症
付録 日本産ツツガムシの検索表