私たちが見えている色は大きく二つに分けられる。色素による色と形がつくる構造色である。全ての光を反射(乱反射)すれば白く見えるし、吸収すれば黒く見える。葉が緑色に見えるのは緑色の光を吸収せずに反射しているからである。緑色の光の波長は540nm(ナノメートル)である。私たちが見える色は、400~800nm程度である。波長が700nm前後だと赤く見え、470nm前後だと青く見える。シャボン玉は太陽の光を受けて、きらびやかな様々な色をかもし出す。シャボン玉に光が当たると、膜の表面で反射する光と、膜の底で反射する光が干渉して目に届くからである。またシャボン玉は重力により、下の膜が厚くなっている。見る角度と膜の厚さの違いにより干渉の条件が異なるため、様々な色をつくり出す。CDやDVDの表面に見られる虹のような色彩もミクロな構造によって、干渉と回折により作り出される。このように光の波長やそれ以下の微細な構造による光の干渉、屈折、回折、散乱などにより、発色する色を構造色という。
この構造色は鳥や昆虫、クモなどいろいろな動物に見ることができる。昆虫の中でも、特にチョウではいろいろなパターンの構造色が知られている。「生きている宝石」と呼ばれているモルフォチョウは、中南米に約80種類生息している大型のチョウである。ほとんどのモルフォチョウの雄は翅の全体が輝く青色をしている。しかし見る角度をかえると紫色や黒色に変わってしまう。チョウの鱗粉一つ一つに細かい筋(リッジ)が並んでおり、切ってその断面を見ると、横方向の突起がやや斜めに棚のよう重なっている(ラメラー薄膜型)。この一つ一つの棚で反射した光が干渉して、金属光沢の青色に見える。日本にも構造色を持つチョウは多い。シジミチョウの仲間やオオムラサキ・コムラサキ・リュウキュウムラサキ・ツマムラサキマダラなどを電顕で観察した。構造色を発色する仕組みは様々である。シジミチョウの仲間は筋と筋の間の凹みの膜にある無数の穴による(チンダルブルー型・薄膜ラメラ型)。オオムラサキなどのタテハチョウ科はモルフォチョウと同じ型であるが、棚の構造が未発達である。