南の島の昆虫はもちろんだが、それ以外の生き物も私には見たことのないものが次から次へと現れてくれて、本当に飽きない。そこで今回は、石垣・西表で出会った八本以上の脚をもつ虫たちを紹介する。
石垣の於茂登岳で見つけたのがギンボシザトウムシ(屋久島から南西諸島に分布)である。本州で見るザトウムシに比べてバランス的に脚が長いような気がするし、胴体が緑色に輝いていて、とても美しいザトウムシだ。さぞ珍しい種類かと思ったら、南西諸島に生息するザトウムシの仲間では、最普通種らしい。胴体部分だけアップで見ると、緑色に光る小型宇宙船のようで、おもしろがって何枚も写真を撮った。真上から撮っていたときには、わからなかったが、横から撮影したときに胴体背面の真ん中に、アンテナのような角が一本、まっすぐ立っているのに気づいた。ますます宇宙船に見えてきた。
野外でサソリも見たことがなかったのに、まさか会えると思っていなかったのがサソリモドキである。学生時代、動物系統分類の授業で、サソリに近い仲間にヒヨケムシ・コヨリムシ・ヤイトムシやサソリモドキ(当時は、たしかムチサソリと習った)などがいることを教わった。いずれも、サソリをかっこいいと思う人には垂涎ものだと思う。石垣島の小さな川のそばで、石の下からタイワンサソリモドキ(沖縄諸島・八重山諸島と台湾に分布)の若虫を見つけた。1cmくらいの大きさで、腹部の色もまだ薄いクリーム色だったが、憧れのサソリモドキに、結構感激した。ところが、その日の午後に登った於茂登岳の石の下から親分が出てきて、思わず同行のみんなを呼び寄せてしまった。
同じ於茂登岳の登山道で、南の島の生き物はこうでなければいけないと思ったのが、ヤエヤママルヤスデである。黒と赤のツートンカラーで、体長が10cmほどの、日本最大クラスのヤスデである。木のくぼみなど、比較的湿ったところによくいた。こんなにたくさんいて、これだけ派手な色をして、さらに和名までついているのに未記載種らしい。誰か早く、このすてきな生き物に学名をつけてあげて!
はじめて西表に行ったとき、大富林道の先から西表横断道に入ってすぐのところで、巨大なクモが地面を歩いているのを見つけた。おそるおそる遠めから1枚、そして勇気をだして、近づいて1枚と写真を撮った。さらにカメラを近づけたら、急に脚をもち上げて威嚇のポーズをとった。胴体だけでも4cmほどの大きさで、赤い大きな上顎をもつクモの威嚇は、正直なところ少し怖かった。東京に帰ってネットで調べてみると、どうも沖縄諸島や八重山諸島に生息するジョウゴグモ科のオオクロケブカジョウゴグモらしい。ジグモ科などに近縁で、かなり原始的なグループのクモだ。倒木の下などに網で漏斗(じょうご)型の巣をつくり、巣に近づいてきた昆虫等を餌にしているそうだ。すると、私が会ったときは散歩か買い物の途中だったのだろうか。
さて、この「南の島チョットだけ探検記」も、いよいよ次回で最後となる。最終回は、「骨のある奴ら」の話で締めくくりたい。