話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.31
南の島チョットだけ探検記 第6回 西表島(いりおもてじま)横断?
執筆者:鈴木信夫
2009年06月24日

 はじめて南の島にきた私にとっては、石垣島の森で十分にジャングル気分を満喫できた。しかし、石垣から船で40分弱のところにある西表島の森はすごかった。そもそも、石垣島は道路がかなり整備されているので、有名な於茂登(おもと)岳に行きたいと思えば、レンタカーで登山口の近くまで行けるし、登山道も整備されていた。登山口の手前にある嵩田(たけだ)林道もチョウやトンボがたくさん飛んでいたが、舗装されていた。
 西表も同じかな?と思っていたら、大間違いだった。そもそも海岸沿いに島を一周できる道路があると思っていた。実際には、南側の大原港あたりから、反時計回りに島の西側まで道路は延びているが、そこ(時計の文字盤でいえば9時の位置)で道路はなくなる。さらに、この周回(厳密には四分の三周)道路から島の内部に向かう道路が、極端にいうと「ない」。森に踏み込む道も簡単には見つからない。ということで、はじめて西表に挑戦した時は、まともに森に入ることさえできなかった。ちなみに周回道路は、立派な舗装道路で、交通量が少ないこともあり、猛スピードで車が走っている。夜も同じように、車が飛び交い、森の中から出てきたイリオモテヤマネコが交通事故に遭う。現在、推定で100頭前後のイリオモテヤマネコが生息しているらしいが、1978年から30年間に45頭が事故死したというから、かわいそうでは済まない問題だ。
 どうしても西表のジャングルに分け入りたいので、事前学習をした。西表には島の西と南を結ぶ横断道があり、かつては生活道路だったそうだ。横断道の整備計画がもち上がったが、イリオモテヤマネコが発見されて、計画は中止されたと地元の人に聞いた。この横断道は結構有名で、いろいろな大学の探検部が夏休みなどにチャレンジするらしい。ただし、相当きついルートで入山許可証も必要となる。そこで、入口から少しだけ入ってみることにした。まず、西側から入るため、浦内川ジャングルクルーズの終点、軍艦岩で降りてカンピレーの滝まで進んだ。入り口はその先にあった。横断道に入ると、それはまさにジャングルで小川のような道があるかと思えば、2~3メートルの崖を這い上がって、すぐに2~3メートル降りる。しばらく水平移動で、またよじ登り下りと、カメラを抱えてこれを汗だくになりながら繰り返す。ジャングル気分は満喫したが、「絶対に、生活道路じゃない」とつぶやきつつ、帰りの船の時間があるので引き返した。滝まで戻ったところで、我々の姿を見た親子連れがこの先に道があるか聞くので、島の南側に抜ける道があるが横断するには入山許可が必要なことを教えた。翌日、横断道の南側の入り口を少し調べるために大原港から大富林道に入り、林道を登っていった。林道の先に、横断道の反対側の入口がある。入り口手前の展望台で視界が開けたが、眼下の仲間川には遊覧船が行き交っていた。そこで、偶然にもあの親子連れに再会したが、我々が昨日から横断道を歩いて来たと勘違いして驚いていた。親子連れと別れてから入った横断道は、しばらくは楽な道が続いたが、すぐに「生活道路」ではなくなった。

 次回は、南の島で本当に「見たかった虫たち」の話である。

飛び出し注意の道路標識
西表縦断道
仲間川
浦内川でカヌーイングを楽しむ観光客