話のたねのテーブル

植物や虫、動物にまつわるコラムをお届けします。
No.34
南の島チョットだけ探検記 第8回 変な虫たち
執筆者:鈴木信夫
2009年07月08日

 いい歳をして虫を追いかけているのは「変な人」かもしれないが、今回はそんな人が見つけた「変な虫」の話である。

 まずはハナノミだが、たとえば本州でよく見るセグロヒメハナノミは、小さくて色も地味で、正直なところ写真に撮ろうとあまり思わないが(ハナノミさん、ごめんなさい!)、西表で見つけたコーシュンシラホシハナノミ(国内では、奄美大島・石垣・西表・与那国に分布。コーシュンとは、台湾の地名、恒春か?)は、何枚も写真を撮った。セグロヒメハナノミの体長が3mmほどなので、ハナノミはみな、その程度のサイズだという先入観があった。そのため、1cmをこす本種を見つけたときは本当にびっくりした。それにしても、ハナノミの仲間は甲虫だというのに、変な形をしている。

 次の虫は、マクロレンズ越しに覗いてみて、「土偶だ!」と思ったダルマウンカである。テントウムシ(甲虫目)に擬態しているともいわれるマルウンカ(半翅目)だが、ダルマウンカ(本邦では南西諸島に分布するが、本州や四国からの記録もある)を見たときは、ダルマではなく、私にはどうしても土偶(青森県の亀ヶ岡遺跡から出土した遮光器土偶)に見えて仕方なかった。遮光器土偶は縄文時代に飛来した宇宙人をかたどったものだと、信じている人もいるようだが、そうなるとダルマウンカもエイリアンかもしれない。

 三番目はナナフシの仲間で、東京に帰ってから調べてみて、「へー」と思ったコブナナフシである。コブナナフシ科(コノハムシ科の1亜科とされることもある)のナナフシで、この科の虫は、日本にはコブナナフシ1種しか生息していない(九州南部から南西諸島に分布)。コノハムシに近い仲間が日本にもいたことをはじめて知った。ナナフシといえば、どうしても見たいのが石垣と西表に生息するヤエヤマツダナナフシなのだが、こちらには未だお目にかかれていない。アダン(タコノキ科)の葉を食べるので、食痕があると葉の間を調べてみるが、出てくるのは迷惑そうな顔をしたクモやゴキブリばかりである。

 最後の「変な虫」は、広翅亜目のモンヘビトンボである。広翅亜目を含くむ脈翅目(アミメカゲロウ目)自体が、「変な虫」の寄せ集めチームである。広翅亜目のヘビトンボ・センブリ、脈翅亜目のツノトンボ・カマキリモドキ、そしてラクダムシ亜目のラクダムシ。それぞれの亜目は独立の目として扱われることもある。
 ヘビトンボの幼虫は水生で、「孫太郎虫」と呼ばれ、昔から子供の疳に効く民間薬として知られている。西表横断道の西側の入り口付近を疲労困憊で歩いていたときに、偶然にモンヘビトンボを見つけて疲れが一辺に飛んでしまった。私にとっては栄養ドリンクだったようだ。黒い頭部につづく胸部背面の、ややくすんだ黄色が目立った。翅の模様もおもしろかったが、なにより、触角が羽毛状になっていて驚いた。オスだけが羽毛状の触角をもっているのかもしれないが、本州で見るヘビトンボはオスもメスも糸状の触角だった気がする。翌日、西表横断道の反対側の入り口でも会うことができた。
 次回は、「虫じゃない虫」の話だが、かなり強烈な連中に登場してもらう。

コーシュンシラホシハナノミ
ダルマウンカ
コブナナフシ
モンヘビトンボ